<評価>★★★★
<あらすじ>
1999年4月20日、コロラド州リトルトンのコロンバイン高校で生徒2人が銃を乱射し、
生徒12人、教師1人を殺害し多数の生徒を負傷させた後、
自殺するという事件が発生した。
ジャーナリストで全米ライフル協会会員のマイケル・ムーアは、
この事件をきっかけに何故アメリカだけでこれほど銃による殺害が起きるのか疑問を持つようになる。
その答えを見つけるために、
残虐な事件が起きるとすぐに影響を与えた人物として名前が挙がるマリリン・
マンソンや全米ライフル協会(NRA)会長のチャールトン・ヘストン、
『サウス・パーク』のマット・ストーン等にインタビューする。
<感想>
アメリカから野蛮な銃を失くせ!
全ての原因は銃にあるということをヒステリックに描いているのかと思ったら、
非常に中立的な描き方をしているので信憑性もあるし、説得力もあります。
私を含む多くの日本人はアメリカで銃犯罪が多発するのは銃規制をしないからで、
銃さえ失くせば簡単に解決すると考えていたと思います。
しかし、アメリカと同じように銃が比較的簡単に手に入り、
多くの市民が銃を保持しているカナダでは、
ほとんど銃犯罪が起きていないことを紹介されると、
銃社会だから銃犯罪が蔓延していると考えるのは安直すぎるように思えてきます。
監督のマイケル・ムーア自身、この問題についてアメリカはこれからどうするべきなのか、
どうさせたいのかというはっきりとした考えを持てないもどかしさが、
インタビューや取材から感じ取れ、
無理やり結論を出そうとしない姿勢にも好感が持てます。
かなり上質なドキュメンタリーだと思いますので、
一度観てみてはいかがでしょうか。
ブラックホーク・ダウン(Black Hawk Down)

ブラックホーク・ダウン
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2001年製作
監督
リドリー・スコット
製作
ジェリー・ブラッカイマー
脚本
ケン・ノーラン
音楽
ハンス・ジマー
出演
ジョシュ・ハーネット
ユアン・マクレガー
トム・サイズモア
ジェイソン・アイザックス
ユエン・ブレンナー
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<評価>★★★
<あらすじ>
紅海の出口にあり、国土の形から『アフリカの角』と呼ばれているソマリア。
冷戦時代、隣国エチオピアをソ連が支援したため、
その対抗措置としてアメリカはソマリアを援助した。
しかし、その後、ソ連が消滅したのでソマリアを援助する必要がなくなり、手を引くことに。
だが、アメリカの撤退を機に内戦が勃発し年々激化していった。
アメリカにとってソマリアの内戦は紅海航路の安全が脅かされることになり、
好ましくないので人道的支援の名のもとに国連軍を派遣する。
だが、最大の兵力を抱えるアイディード将軍が反国連軍的であったので、
アイディード拉致作戦を行うことを決定する。
当初の予定では30分で完了する予定だったが、
ソマリア民兵の反撃に遭い、武装ヘリ・ブラックホークが撃墜されたうえ、
救助に向かった部隊がことごとく反撃され孤立してしまう。
このためアメリカ軍が次々と兵力を投入し大規模な市街戦へと発展する。
<評論>
一言で言ってアメリカのプロパガンダ映画。
兵士の友情、連帯感、使命感などに焦点を当てて事件を描くことによって、
アメリカによるソマリアへの干渉を正当化しようとしている。
正義の尖兵、世界の警察を気取っていてもやっていることは、所詮はマッチポンプに過ぎない。
前線で戦わされる兵士と協力国こそいい面の皮。
しかし、単純に現代版コンバットといった戦争映画としてみるのであれば、
非常に迫力もあるしリアルなので楽しめると思うので、気に入らないけど三ツ星。
K-19(K-19)

K-19
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2002年製作
監督
キャスリン・ビグロー
製作
キャスリン・ビグロー
エドワード・S・フェルドマン
脚本
クリストファー・カイル
音楽
クラウス・パデルト
出演
ハリソン・フォード
リーアム・ニーソン
ピーター・サースガード
クリスチャン・カマルゴ
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<評価>★★
<あらすじ>
1961年、核戦略で遅れをとっていたソ連は原子力潜水艦の開発に躍起になっていた。
そこでソ連は原潜K-19を短期間で建造したのだが、
十分な期間も予算も与えられずに建造されたK-19は、
建造中から多数の死者を出しWidowmaker(未亡人製造艦)というありがたくない名を冠せられてしまう。
また、出航間際にクレムリンの意向で急遽艦長として乗り込むことになったアレクセイ・ボストリコフ(ハリソン・フォード)
と部下の信頼を一身に集めるミハイル・ポレーニン(リーアム・ニーソン)が訓練の方法などをめぐりことごとく対立する。
艦首脳の確執、練度不足の乗組員、整備不足と問題山積のK-19であったが無事に当初の訓練を終え、
アメリカ東海岸での偵察任務に就くべく大西洋を潜航していた。
全てが順調に思えた処女航海だったが、
突如原子炉の冷却装置でひび割れが生じたため、
炉心温度が上昇し炉心融解の危機を迎える。
<感想>
はっきり言って潜水艦ものとしては非常に不満の残る作品。
ハリソン・フォードはどんなにがんばって観てみてもロシア人に見えないとか色々ありますが、
何よりクレムリンと艦首脳、ボストリコフとポレーニンの対立があっさりしすぎ。
真っ向から意見が対立しているのに、一言、二言、言い争うだけで簡単に引き下がってしまうので、
本当にただ言ってみただけって感じで迫力が全くありません。
『クリムゾン・タイド』のような激しい応酬を期待しているとかなりがっかりします。
これは出航するまでにかなりの時間を割いてしまっているので、
肝心の出航後の事故を十分に描けなくなっているからだと思います。
それなら、出航前のどうでもいい話はカットして、
出航後の訓練方法での確執辺りから始めて、
一気に炉心融解の危機に持っていき、
その対応を巡っての二艦長の対立に焦点を当てて観せた方が良かったのではないかと思います。
ただ、放射能の恐ろしさが改めてよくわかったことだけは良かったです。
K-19を観るのであれば、
放射能に対しての無知がいかに恐ろしいかを描いたマーチン・シーンの
『ナイトブレーカー』や潜水艦ものの最高傑作『Uボート』などを観る方がいいのではと思います。
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